君は僕のもの 僕だけのもの




 寒い日だったけれども、君と君のいれてくれた紅茶は温かい。程よい温度を保たれた君の部屋で、ボクは白いティーカップに口接けた。
「私、ルネ様と姉弟だったら良かったな」
「どうしたの。アンジェ」
 何を急に言い出すんだろうか、ボクの恋人は。
「…そうしたら、もっと早くから出逢えていますし、もっと一緒にいられたかしらって」
 ふうん。ボクはそんなの要らないのに、君はそうじゃないんだ。面白くないなぁ。
 ティーカップをソーサーに置いて、頬杖をついて、ボクの気持ちも知らない、はしゃぐ君を見た。
「ねぇ、アンジェはボクが弟だったら何がしたいの?」
「え…考えていませんでした。うーん…‥そうですね、ルネ様が弟だったら、一緒に遊んだり、ご飯を毎日作りたいです」
 うつむいて頬を染めてはにかむなんて、反則だよ。あーあ、可愛いなぁ。
「それは今でも出来るよね、そうじゃなくてボクが君の弟じゃなければ出来ないこと」
「そ、それは――」
「だいたい、ボクはね、君と姉弟なんてゴメンだね」
アンジェは眼を丸くして、次に涙目になっちゃった。
「だってさ、一緒にいられるかもしれないけど…」
 椅子から降りて最近、ボクより小さくなったアンジェにキスをひとつ贈る。
「こんなこと、出来なくなるからね」
「ルネ様っっ!」
「ああもう、どうせ呼ぶならもっと色っぽい声がいいなぁ」
 真っ赤な君に、もうひとつキス。
「アンジェ、こういう時は眼を閉じるものだよ?ふふっ、そう…良いこだね」
「あっ…‥」
 しがみつく君が愛おしくて、ふるえる細い指が寒そうで。
ボクは神聖な気持ちになって美しい女神の指の一本、一本へ唇を丁寧に落とした。
「‥あの、わたし…ルネ様のこと…いっぱい知りたいんです――」
「…教えてあげる。――君が、僕しか‥…考えられなくなってしまうくらいにね…」
「ルネ様‥嬉しいです…」
 潤んだ瞳で僕を見る君は、目眩がする程に綺麗。
「こら、眼を開けていいなんて、僕は言ってないけど?」
 こんな上機嫌な僕なんて、君以外が見たら、さぞや驚くんだろうな。
「ねぇ、僕の可愛いアンジェ。雪遊びは後にして…今は」
「あぁ、ルネ様――」
 やわらかな君を大きなソファーへ横たえる。
「…ボクで君をいっぱいにしてあげる」
 アンジェはもう、何も言わずボクの首へ両腕を回す。
「大好きだよ、ボクの…アンジェ」








 ねぇ、ボクは君に出逢う前は飛ぶことも許されない籠の中の鳥だった。
そんな窮屈な世界に君は置けないよ。
だから、今――。
今、君に出逢えて抱き締めて、キス出来る幸福を感謝する。
君はもう、ボクのもの。ボクだけのもの。










【了】